3月27日(日)7:30~8:00
シリーズ・いしかわの礎⑦
『石川の水がめ 手取川ダム』
◆◆◆ふるさとの歴史ロマンを探る30分◆◆◆
まだまだ寒い日が続きますが、日差しが降り注ぐと、
春はもうそこかな?と思えてきます。
シリーズの最終回は、まだ一面雪に覆われた「手取川ダム」です。
◎北陸最大のロックフィル式ダム
手取川ダムは国内12番目の高さとなる153m、幅は420mの
森の中の要塞です。ロックフィル式ダムは中心部が粘土質で、
細かい砂利からだんだん大きな岩を積み上げて出来たダムです。
有効貯水量は東京ドーム200杯分とも言われ、
洪水などを防ぐ治水、生活水や工業用水の供給、
そして水力発電などいくつもの役割を持つ、多目的ダムです。
元々このダムは昭和9年の手取川大洪水をきっかけに
建設の声が持ち上がり、昭和49年に着工。
6年の歳月をかけ、総事業費770億円で、昭和55年に完成しました。
旧白峰村と旧尾口村の330戸・322世帯がダムに沈み、
当時の住民たちは家屋の板1枚も残さないよう求められました。
そのダムに沈んでいく集落の跡地を撮影した人がいます。
宮村成信さんと朝倉英夫さんです。
2人が昭和54年7月1日に訪れた際の写真を見せていただくと、
まさに道路が水に飲み込まれていく瞬間の様子が捉えられていました。
再びその撮影現場を訪れると、ちょうど今の時期は水位が下がっていて、
斜面の下のほうに、雪や落石などをブロックする
スノーガード(トンネルのようなもの)の頭がちらっと見えました。
宮村さんが撮影した写真にもハッキリと写っています。
宮村さん・朝倉さんは胸が締め付けられる思いで、
撮影していたそうですが、そもそもこの写真を撮影することになったのは
ダムに沈んだ深瀬地区に300年以上受け継がれる伝統芸能、
「深瀬のでくまわし」がきっかけでした。
◎「でく」がつなぐ絆
深瀬のでくまわしは、東二口地区の「人形浄瑠璃」と並び、
国の無形文化財に指定されている伝統芸能です。
「木偶(でく)」と呼ばれる人形をまわし、足で拍子をとるなど、
素朴な雰囲気がただよう「でくまわし」ですが、
宮村さん・朝倉さんの2人が初めて深瀬を訪れたのは
ダムに沈む2年前のことでした。
集落がなくなる事実を知って衝撃を受けた2人ですが、
以来、集落の人々の記憶を残そうと、でくまわしだけでなく、
風景も写真に残していったのです。
保存会のメンバーは新たな居住地となる深瀬新町を拠点に、
メンバーを何とか呼び集め、復活させました。
また素朴な伝統芸能に魅せられて、新たなメンバーも増えました。
宮村さん・朝倉さんは今も毎年2月の公演に足を運び、
保存会メンバーと交流を続けています。
「でく」が人を呼んでくれた…
私たちの暮らしを支えるダムの歴史には、
こうした人間ドラマが隠されていたのかと思うと、
この伝統の火をずっと守り続けてほしいなと願うばかりですね。
いしかわ大百科
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【リポーター】平見夕紀