12月15日(日)10:55~11:25
シリーズ・ふるさと技模様④
『刃先が踊る ~山中・加飾挽き~』
◆◆◆ふるさとの遺伝子を探る30分◆◆◆
今回は世界水準を誇るともいわれる木地挽きの技から生まれた
山中漆器の美の世界に誘います。
◎究極の木地挽き
石川県には3つの漆器の産地があります。
塗りの輪島塗、蒔絵の金沢漆器、
そして木地挽きをもっとも得意としているのが山中漆器です。
日本随一といわれる木地挽きの技で特に目を見張るのが加飾挽き。
ろくろを回して木地に刃物を当て、模様をつけていくものです。
渦巻き状に同じ間隔で筋を挽いていく「千筋」や「平筋」のほか、
「稲穂筋」や「ビリ筋」などいくつもの加飾挽きがあり、
それぞれ使う刃物や挽くときの木地への当て方、スピードも変わってきます。
特に刃物を振動させてつける場合は刃先が躍るように揺れて、
複雑な模様に仕上ります。
出来上がった器を見ただけでは、
どのように挽いているのか想像もつかない達人技。
他の産地では見られない山中の職人たちの技の極みです。
「千筋」を得意とする久津見龍也さんは、
『リズムが大切。何年やっても難しい』とその奥の深さを語ってくれました。
また人間国宝の川北良造さんは、
『どうやって挽いたか、まだ分からない筋がある』と
先人たちの偉業を称えながら、今も新しい技に挑んでいます。
川北さんが全盛期に手がけた「毛筋」や、
象嵌などを施した繊細な作品まで、木地師の魂が宿っているようです。
◎美を追求
若き伝統工芸士として活躍する中嶋武仁さんは、
ことし60回目を迎えた日本伝統工芸展で最高賞となる総裁賞を受賞。
今回、「ビリ筋」などの加飾挽きの技を見せてくれました。
しかし、本人は加飾挽きにこだわらない美を求め、
自分らしい表現で製作活動に没頭してきました。
その感性が今回の受賞につながり、これからの活躍も期待されます。
全国でも唯一の研修所では今も未来の木地師を目指して
若者たちが技を磨いています。
研修所を卒業し、去年独立した田中瑛子さんは
中嶋さんの工房でも5年間修業し、
モノづくりに対するこだわりをより一層強くしました。
女性ならではの柔らかい作風に磨きをかけ、
伝統に裏打ちされた山中の木地師の誇りを大切にしています。
厳しい環境で技を磨いてきた先人の伝統を受け継ぐ山中漆器。
今回はその加飾挽きの技と美しい模様に迫ります。
いしかわ大百科
【OA】日曜 午前7:00~7:30 ≫≫≫「ぶんぶんセブン」「弦哲也の人生夢あり歌もあり」と週替りで放送
【リポーター】平見夕紀