不法海域
~北のミサイルと密漁船~
2 0 1 8 年 5 月 2 8 日 放 送
日本海に鳴り響く、警笛。
霧の中から1隻の船が輪郭を現しました。
日本の漁船のすぐ脇をかすめ、
危険な操業を繰り返す船。
北朝鮮から来たイカの「密漁船」です。
同じ形をした船は、至るところに。
豊かな日本の海がいま、
北の黒い影に飲み込まれようとしていました。
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石川県能登町小木。
この日、
1隻のイカ釣り漁船が小木港に戻ってきました。
日本海の様子を聞くと表情が曇る船長。
日本海有数の漁場「大和堆」に
4~500隻の外国船が押し寄せ、
危険な操業を繰り返しているといいます。
それは、
北朝鮮から来た密漁船。
彼らがやって来る理由は―。
小木の男は、漁師に―。
全盛期の昭和50年代、
小木港に所属したイカ釣り漁船は、約170隻。
シーズンになると、
住民総出で水揚げを手伝いました。
それから40年。
後継者不足などで漁師の廃業が相次ぎ、
イカ釣り漁船は全盛期の1割以下に。
先細りする、小木のイカ釣り漁。
そこに追い打ちをかけたのが
北朝鮮の脅威でした。
国に現状を知ってほしい。
漁師たちは違法操業の実態を記録し始めました。
ある日、
日本海の大和堆で密漁船に遭遇した漁師たち。
「そんなイカ釣り許可できねえんだから!」
呼びかけもむなしく、
密漁船は彼らの目の前で
イカがかかった網を平然とあげ続けます。
別の映像には、
まるで日本船が邪魔だといわんばかりに
手を振る密漁船の船員の姿が。
その背景にあるものは―。
“漁船は祖国と人民を守る軍艦であり、
とれた魚は戦時中の銃や砲弾と同じです”
原稿を声高に読み上げる北朝鮮のアナウンサー。
北朝鮮では、数年前から
水産業の拡大政策が始まったといいます。
しかし、
水産庁の対応は退去警告にとどまり、
小木の漁業関係者は憤りを隠せません。
「普通、泥棒やったら皆捕まるでしょ?
なんで海なら捕まらないんですかね」
小木と北朝鮮のイカ釣り漁をめぐる歴史。
かつては民間協定を交わし、
日本船は北朝鮮水域での操業が許されていました。
しかし、
協定が途切れていた時期、
小木の船をある悲劇が襲います。
1984年。
禁止されていた軍事境界線に立ち入ったとして
小木の船「八千代丸」が北朝鮮の船に銃撃され、船長が死亡。
船と乗組員4人が拿捕されたのです。
この事件は、
小木の漁師たちの心にいまも深く刻まれています。
2017年、
北朝鮮は17発のミサイルを発射。
そのうち11発は、
日本海に落ちました。
イカ釣り漁師たちは海からだけでなく、
空からの脅威にもさらされていました。
5月になると、
小木の港に響くお囃子の音。
とも旗祭りを終え、
ことしも漁師たちはあの海へと繰り出します。
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