6月21日(日)7:30~8:00
ふるさと探訪シリーズ・わが街こころの風景④
『恵みに抱かれた温泉郷 ~加賀市~』
◆◆◆ふるさとの遺伝子を探る30分◆◆◆
目に鮮やかな新緑と川のせせらぎ・・・これだけでも癒しの空間ですが、
さらに温泉も!・・・となると、こんなゼイタクはないですよね。
今回は温泉郷のこころの風景です。
◎温泉に歴史アリ
加賀南部には、片山津・山代・山中・粟津の4つの温泉地があります。
このうち加賀市に属する3つの温泉地を訪ねました。
片山津温泉は目の前に柴山潟が広がり、
奥に霊峰白山(標高2702m)を望むという絶景の温泉地。
源泉は潟の湖底にあるということで、
大変な苦労の末、今から130年前に開湯しました。
愛染寺には湖底から温泉を掘り出すための道具(鉄の棒)が残されています。
この棒を湖底に突き刺し、はしごをかけて1本1本つないでいくという
「大坂掘り」と呼ばれる技法で、現存する道具としては全国で2例とか。
開湯の歴史は浅いが、それだけに詳細が分かっているので、
先人の苦労を後世に伝えていかなくては・・・と、ご住職は話します。
一方、1300年の歴史を誇る山中温泉は、俳人・松尾芭蕉が
8泊9日も滞在したほど、自然にあふれた風光明媚な温泉地。
「山中や 菊はたおらじ 湯のにほい」の句はあまりにも有名です。
医王寺に伝わる「山中温泉縁起」には、開湯後に一旦廃れて、
後に戦国武将の長谷部信連が再び発見した様子や
開湯後、老若男女問わず、お湯を楽しんでいる様子が描かれています。
当時は混浴だったんですねぇ。
山中温泉といえば、「こおろぎ橋」や「あやとり橋」などの見どころが多い
鶴仙渓(かくせんけい)の自然が見逃せません。
新緑に包まれたこの景色と温泉が重なって、
多くの湯治客を呼び寄せたのでしょう。
地元の人にとっても、子どもの頃の遊び場でもあり、
誰の心にも染み入る風景になっているのです。
◎温泉街の心意気
最後にご紹介するのは山代温泉。こちらは8月に総湯が新しくなります。
ご近所では家に風呂を置いていない家が多いそうで、
「オギャー」と産まれたときから、総湯が産湯になるほど、
温泉が身近なものになっています。
毎日、顔を合わせるという地元の人たちは、
子どもの頃から、この総湯で親睦を深めてきたわけです。
他所から来たお嫁さんが「総湯デビュー」するという
エピソードも教えてくれました。
この山代温泉では、毎年6月上旬に「菖蒲湯まつり」が行われるのですが、
祭りの最大のクライマックスは、菖蒲を詰めた俵を総湯の湯船に
豪快に投げ入れるところ。8月にリニューアルするということは、
今の総湯での祭りが最後になるというわけです。
地元の青年団はこの菖蒲を詰めた俵で
重さ600キロもあるという大きな神輿を作ります。
1300年の温泉の歴史に加え、街の先輩たちが受け継いできたとあって、
作業にもより一層、熱い気持ちがこもります。
35歳で役目を終える青年団の団長は、
「こんこんと湧き出るお湯に感謝する祭りと教えられている」と、
気持ちを引き締めてクライマックスを迎えました。
心と体を癒してくれる温泉ですが、地元の人たちにとっては、
周りの自然の恵みや長年培われてきた歴史と
何より、地域の人たちのつながりが大切だと教えてくれました。
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【リポーター】平見夕紀