3月29日(日)7:30~8:00
シリーズ・ふるさとの手仕事⑥
『風土を灯す 能登ちょうちん』
◆◆◆ふるさとの遺伝子を探る30分◆◆◆
石川県内の手仕事を紹介するこのシリーズも今回が最終回。
最後は能登の祭りなどに欠かせない「ちょうちん」です。
◎まずは道具から
和紙を通して照らされる柔らかい光り。
もともとちょうちんは暮らしの中に欠かせないものでしたが、
今では照明としての役割はすっかり失われてしまいました。
中能登町の「亀井ちょうちん店」は、
能登ちょうちんの伝統を守り続けるただ一軒のお店です。
3代目・亀井斉(かめいひとし)さんは、
92歳になる先代・駒吉(こまきち)さんとともに、
こだわりの材料で手作りのちょうちんを手がけています。
駒吉さんが扱っている道具、よく見ると
「ひご」を引っ張る道具のハンドル部分は自転車のチェーンの歯車!
ちょうちんを美しく仕上げるために、道具も工夫がなされているんです。
これは亡くなられたお兄さんが作ったもので、
54年経った今も現役で頑張っています。
それにしても、駒吉さんが手がけるちょうちんの型の美しいこと。
「角の立ったちょうちんはダメ」と、そのゆるやかな曲線に
62年間携わってきた熟練の手仕事が垣間見えます。
一方、3代目の斉さんは奥さんと共同作業でちょうちんを作っています。
こちらは神社に飾られる大きなもの。
型をうまく組み合わせて、丁寧に和紙を貼り付けていきます。
と思ったら、今度はちょうちんに頭を突っ込みました。
何をするのかと思ったら、文字や図柄などが入った紙を合わせています。
こうして、内側から奥さんが光を当てると、表面に模様が浮かび上がり、
寸分違わずに模様を描けるというわけです。
この文字や図柄はどのちょうちんにも応用されていて、
先人から代々受け継がれてきたもの。
つまり、何年経っても、同じちょうちんを作り出せるんです。
◎能登の風土に欠かせない
ところで、能登といえば勇壮な祭りが盛んな土地柄です。
祭りで欠かせないのが逆三角形の形をした「奴提灯」。
この形は能登特有で、「怒り型」と呼んでいます。
祭りの際、家の前に立てたり、キリコを誘導するなど、
古くから受け継がれてきたもので、
輪島市の「曳山祭り」では、厄年の男性が主役になることから、
新しいちょうちんを注文します。
もちろん、手がけるのは亀井さん。
伝統があり、また華やかさも見せるちょうちんに
祭りに参加する人たちも喜びにあふれていました。
また羽咋市で毎年行われる「唐戸山神事相撲」では、
最高番付となる大関だけが、ちょうちんを受け取ることができます。
つまり一番強い力士の証として、ちょうちんが贈られるのです。
いやはや、能登のちょうちんは祭りや神事に欠かせない、
まさに風土を灯す逸品なんですね。
92歳の駒吉さんいわく・・・
『手作りの 強み老いても 仕事くる』
長年の経験に裏打ちされた、本物の手仕事が能登にあります。
いしかわ大百科
【OA】日曜 午前7:00~7:30 ≫≫≫「ぶんぶんセブン」「弦哲也の人生夢あり歌もあり」と週替りで放送
【リポーター】平見夕紀